干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「え……」

 真っ白になった頭で立ち尽くす美琴の手を、雅也がさらにぎゅっと力を込めて握る。

「君の事が好きなんだ。初めて渓谷で会った時、滑落しかけた面白い女の子だなって思った。でも知っていくうちにどんどん惹かれていった。俺自身がどんどん変わっていったんだ。そして今はっきりと気がついたよ……」

 二人を乗せたエレベーターがカタンと揺れ、よろめいた美琴は雅也に抱きしめられた。


「俺には美琴ちゃんが必要なんだよ。変えるためには、美琴ちゃんがいないとダメなんだ。
ねえ……さっきSNSに励まされてたって言ってたよね?」

「え……?」

 美琴は雅也の腕の中でそっと顔を上げた。


「だったら……今度は俺を、美琴ちゃんが励ましてくれないかな?」

 耳元で聞こえる雅也の言葉は熱っぽさを帯びているが、その瞳は今にも泣きだしそうな程悲しげだった。


 ぽんと音が鳴って、エレベーターが駐車場の階に到着する。

 美琴は慌てて雅也から自分の身体を引き離そうとするが、もがく美琴の右手を雅也がぎゅっと握った。


「グリーンデザインを辞めて、うちに来て欲しい」

 ゆっくりと扉が開き出した時、雅也は力込めて言った。
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