干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「この仕事はうちの会社にとっても、名前を売る非常に大きなチャンスです。映画は国内にとどまらず、海外からも注目されている作品です。そのPRイベントとなれば、全国規模で注目されることは間違いありません。僕を子会社に異動させるなら、この仕事が終わってからにしてください!」

 社長は一気にまくしたてる俊介の目をじっと見つめた後、眉間に皺を寄せてしばらく目を閉じていた。


「……わかった」

 だいぶ時間が経ったのち、社長の低い声がしんとした室内に響く。

「お父さん!」

 朔人が隣で慌てて声を出した。


「ただし、この社員は関わらせるな」

 社長は、美琴の写真を指で叩きながら厳しく言った。

 俊介は拳を握りしめ、ぐっと耐えながらその様子を見つめる。


「できません……」

「なんだと?!」

「彼女なしではこのプロジェクトは成り立たない。彼女は引き抜きには無関係です」

「どう関係ないんだ。事実トータルの息子と、親密に話しているじゃないか」

 社長は印刷した紙を手で(ひるがえ)し、俊介の元に投げつけた。
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