干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
大切な人
美琴は温室の奥の作業台で、黙々とコウモリランの板付け作業を続けていた。
今回は森山さんのカフェの時とは違い、サイズ感もかなり大きなものを使用する。
シカの角に見立てるように配置して、慎重にテグスを巻いていった。
今は温室のスタッフもみんな出払っていて、室内には空調機の音と美琴の作業する音だけが響いている。
――人の声が聞こえないだけで、ほっとする……。
ここ最近は話し声が聞こえたと思ったら必ず、好奇のまなざしと共に美琴の噂話が耳に入った。
そして噂話も辛かったが、何よりも苦しいのが副社長との心の距離が開いてしまった事だった。
自分が“SNSの人”という言葉にとらわれたせいで、大切な人を失ってしまうかも知れないという不安でいっぱいになる。
「副社長……」
美琴は自分の感情を確かめるようにそっとつぶやいた。
「はい」
すると突然、美琴の後ろから低い声が聞こえる。
美琴が慌てて振り返ると、缶コーヒーを二本手に持った副社長がほほ笑みながら立っていた。
「気づかれちゃいました? 驚かそうと思ってそっと入って来たんですけど」
優しい声の響きに、美琴はどんどん視界がぼやけて見えなるのを感じながら、何度も何度も首を振った。
今回は森山さんのカフェの時とは違い、サイズ感もかなり大きなものを使用する。
シカの角に見立てるように配置して、慎重にテグスを巻いていった。
今は温室のスタッフもみんな出払っていて、室内には空調機の音と美琴の作業する音だけが響いている。
――人の声が聞こえないだけで、ほっとする……。
ここ最近は話し声が聞こえたと思ったら必ず、好奇のまなざしと共に美琴の噂話が耳に入った。
そして噂話も辛かったが、何よりも苦しいのが副社長との心の距離が開いてしまった事だった。
自分が“SNSの人”という言葉にとらわれたせいで、大切な人を失ってしまうかも知れないという不安でいっぱいになる。
「副社長……」
美琴は自分の感情を確かめるようにそっとつぶやいた。
「はい」
すると突然、美琴の後ろから低い声が聞こえる。
美琴が慌てて振り返ると、缶コーヒーを二本手に持った副社長がほほ笑みながら立っていた。
「気づかれちゃいました? 驚かそうと思ってそっと入って来たんですけど」
優しい声の響きに、美琴はどんどん視界がぼやけて見えなるのを感じながら、何度も何度も首を振った。