干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 その後、無事にすべての作業が完了し、初めての壁面装飾が完成した。

「思い描いていた通りにできた……」

 美琴は潤んでくる瞳を感じながら、胸の前でぎゅっと両手を握る。


 ステージの上で存在感を放つ壁面装飾は、通りがかりの人々がみな足を止めて見ていた。

 美琴達もステージを降り、下からその森の様子を見上げる。

 母なるブナの木に(いだ)かれるかのように、様々な生き物が静かに息づく世界がそこにあった。


「よくやったな……」

 部長がぽろっとつぶやく。

 それにつられるかの様に、滝山が大声で泣きだした。

「え?! タッキーやめろよ。俺まで泣きそうだ」

 ぎょっとした顔をして、東が滝山を小突く。

「だ、だってぇ。この数週間色んな事があって……それなのに最後のラストスパートで友野さんが突っ走るから、気力も体力も限界だったんですぅー」

「え?! 私?!」

 美琴は滝山の号泣っぷりに自分の涙は引っ込んでしまい、逆に大きな笑い声をあげた。


「よし! じゃあボスが戻るまでに片付けを済ませとくか」

 部長のかけ声でみんなは一斉に動き出す。


 ――本当に素敵な仲間……。一つ仕事をする度に、みんなが大切になっていく。


 美琴は作業をするそれぞれの背中を愛おしく見つめていた。
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