干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「それは何故って、聞いても良いですか?」

 しばらくして副社長が静かに、だが緊張した声を出す。


「……返事をするために、です」

 美琴は躊躇(ためら)いながら答えた。

「返事? 引き抜きのですか?」

 美琴は小さく首を振る。


「告白の……告白された返事をするためにです」

 信号が黄色から赤に変わり、車はキキーっと音を立てて急停止した。


 美琴は思わず前のめりになり、慌てて後ろに身体を引き起こす。

 驚いて隣の副社長を振り向くと、副社長も慌てた様子で口元に手を当てていた。

「すみません……そうですか」


 今まで、こんなにも取り乱した副社長の姿を見たことはなかった。

 美琴は口元をキュッと結び、副社長に向き直る。

「でも、私の気持ちは一つです。水上さんにちゃんと向き合って、それを伝えてきます。だから……」

「だから……?」

「明日聞かせてください。副社長が前に言っていた『この仕事が終わったら伝えたいことがある』っていう話の続きを」


 頬を真っ赤にして話す美琴の顔を、副社長は少し驚いたように見ていたが、ふっと目を細めてほほ笑んだ。

「もちろんです」
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