干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 雅也は揺れる瞳で、しばらく美琴の事を見つめていたが、急にふっと笑うと下を向いた。

「本当はね、何度も言おうと思ってたんだ。でも勇気がなかった。俺はずるい奴だからね」

「水上さん?」

 美琴は、雅也が何を言っているのかよくわからず、首を傾げる。

「それでも、美琴ちゃんが俺自身に向き合ってくれたこと、感謝してるよ……」

 雅也は、戸惑った表情を浮かべる美琴の顔を、正面から見つめて続けた。


「ごめんね。嘘ついてたんだ。SNSの人は俺じゃない」


「え……」

 美琴は言葉を失い、ただ呆然(ぼうぜん)としていた。


 ――SNSの人は、水上さんじゃなかった……?


 驚いたまま固まる美琴の様子に、雅也は再び寂しそうな表情をした。


「前に聞いたよね。俺がSNSの人だったらどうするって」

 美琴は小さく頷く。

「そうすればきっと、美琴ちゃんは俺の事を気にするってわかってて言ったんだ。ずるいよね」

 雅也は自分に首を振りながら、再び下を向いた。
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