干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

泥船の再出発

「二人とも遅いですね」

 美琴は心配そうな顔つきで、入り口の扉に目を向ける。

 副社長と部長が出て行ってから、だいぶ時間が経っていた。

 美琴は壁の時計を見つめながら、また作業に取りかかる。

 テレビ放映以降、緑化事業に対する問い合わせが急増し、美琴達は資料の送付に追われていた。


「ど、どんな話なんですか? 東さんは知ってるんですよね?」

 宛名ラベルを手際よく封筒に貼り付けながら、滝山がソファに寄りかかる東を振り返った。

「まぁ、軽くね。イベントの後、俊介が社長のとこに行っただろ? そこで話がつくかと思ってたけど、持ち越しになったって言ってたから……」

 東がそこまで言った時、ガチャリと扉の開く音がして、部長が顔を覗かせた。


「部長!」

 美琴の声に、東と滝山も腰を浮かせて振り返る。

「みんな揃ってるな」

 部長は取手に手をかけたままそう言うと、神妙な面持ちで副社長に道を譲った。

 静かに入ってきた副社長の顔つきは、強張(こわば)っているように見える。


「何かあったんですか?!」

 美琴は心臓が緊張で締め付けられそうになりながら、思わず側に駆け寄った。
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