干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「今やテント持って飯盒炊爨(はんごうすいさん)して、って時代じゃないってことだな」

 腕を組み、うんうんと頷く部長の肩に健太が手をかける。

「いやいや、部長。飯盒炊爨っていつの時代ですか……。それはそうと、グランピングって?」


「私、知ってます」

 胡桃がサッと手を上げた。

「簡単に言えば、手ぶらで行けるリッチなキャンプ。泊まるのはテントが主ですけど、トレーラーハウスやコテージもあります。場所は大自然の中だけど、ラグジュアリーなホテルに泊まるのと同じで、全部用意されてるんですよ」

 ふーんと聞きながら、美琴は資料を手に取った。


 見た目は一般的な三角のテントだが、素材はコットンのようで生成りの色をしている。

 イメージとしては、モンゴルの草原に立つゲルテントか。

 かなりの大型テントなのか、中にはリゾートホテルにありそうなベッドが二台。

 ランプで灯した室内は、暖かなオレンジ色の光で幻想的に見える。

 テントの外にはバーベキューセットが置かれ、豪華な食材と共に添えられるワイングラス。


「ちょっと今までのキャンプとはイメージが違いますね。豪華でおしゃれ……」

「こ、これを設置するスペースをグリーンで作るってことですか?!」

 静かに目を閉じていた俊介がすっと立ちあがり、みんなが一斉に振り向いた。


「これは緑化事業部の、一大プロジェクトになります。皆さん心して取りかかりましょう」
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