干物のミカタ　～副社長！　今日から私はあなたの味方です！～

変化の時

　俊介は、静かに社長室の扉をノックする。

　ここに来るのは、専務の証拠メールを持ってきた時以来だ。


　社長室に毎日入り浸る朔人とは対照的に、俊介がここを訪れるのは今までにも数回ほどしかない。

　副社長になった当初から、社長とは関係が悪かったのもあるが、社長は用件があれば秘書を通じて伝えてくるし、大抵は健太がその応対をしていた。


　――展示会の話が、噂になったタイミングでの呼び出し。悪い話でなければいいが……。


　扉が開くと奥には、デスクに座っている社長の顔が見える。

　社長の顔つきは意外にも穏やかだった。

「呼び出してすまなかったな」

　先に社長が口を開いた。


「単刀直入に言う。緑化事業部の、副社長室付を外す事にした」

　社長の言葉を聞いた俊介は、はっと息を呑む。


「えっ？！」

　思わず健太が大きな声を出し、慌てて口元を押さえた。

「どういう事でしょうか？　緑化事業部は、今重要な仕事の真っただ中にあります。私が離れることは考え難(がた)いのですが」

　俊介は納得できない自分の気持ちを抑える様に、あえて静かな声を出した。


「お前にとって、緑化事業部が思い入れのある場所だということは十分理解しているし、直近の展示会の事も承知している」

　社長は一旦言葉を切った。
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