干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「俊介さんはさっきの方と、ずいぶんと親しそうでしたね。私、妬いてしまいそうです」

「は?」

 ポンと音が鳴り、エレベーターは地下に到着した。

 駐車場の自動ドアを抜けながら、俊介はそっと由紀乃の様子を伺う。


 ――この人は、なぜこんな事を言うんだ……?


 俊介は車を待ちながら、父と鷺沼社長がしているであろう“仕事の話”を推し測る。


 トータルとライバル関係にある鷺沼造園が、同じくトータルに吸収合併を仕掛けられたグリーンデザインに近づいた。


 ――何か強い結びつきを持とうとしている……? まさか……。


 その時、目の前に社長専用の車が乗り付けられた。

 俊介は後部座席の扉を開け由紀乃を中に促し、自分も隣に腰かける。


 俊介が行先を告げる前に、運転手は軽やかに車を発進させた。

 すでに観光ルートは、父から伝わっているらしい。

 流れる街並みに目をやると、車は街のシンボルでもある有名な観光タワーに向かっているようだった。


 硬い表情のまま隣に座っている俊介の顔を、由紀乃がチラッと覗き込む。

「俊介さん。ご存じでした?」

 由紀乃は可愛らしく首を傾げると、クスリと笑った。

「はい?」

 俊介は何の事かわからず、戸惑いながら由紀乃を振り返った。
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