干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「それに、俊介と関係があるという緑化事業部の女性社員も、この話を聞けば大人しく身を引くだろう。何なら金を渡してもいい」

 健太は自分の血の気が、サッと引くのを感じていた。


 ――お前たちの勝手な都合で、二人を別れさせろというのか?!


 健太は拳を握りしめ、社長を睨みつける。

「それを俺にやれというんですか?!」

 健太はわなわなと肩を震わせながら、怒りを抑える様に低い声を出した。

「そうだ。お前に頼みたい」

 社長はデスクに肘をつき目の前で手を組みながら、健太をジロリと見つめている。


「……できません。副社長を、俊介を説得することはできません」

 頑なに首を振り続ける健太に、社長は大きなため息をついた。

「お前が俊介の事を、家族の様に大切に想ってくれていることはよくわかっている。だからこそ聞いて欲しい」

 社長は、落ち着きを取り戻した穏やかな声で話を続けた。

「ここしばらく、俊介の働きぶりを側で見ていて私は驚いたよ。あんなにも成長していたとは。鷺沼はうちなんか比じゃない大企業だ。俊介の器ならあの会社で存分に能力を発揮できる。もっと自分の力を試せるだろう」
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