干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「部長―」

 美琴は部長の顔を見ながら、笑顔で手を振った。

「あ? ……あぁ、干物か」

 部長の顔は心なしか、疲れているように見える。


「どうしたんですか? 冴えない顔して。イケオジの名が泣きますよ」

「ばーか。そんな顔してたか?」

「はい! バッチリ!」

「はは。お前に言われたんじゃ、俺もまだまだだな」

 部長は美琴の頭をぽんぽんと叩き、片手を上げるとそのままフロアに戻って行った。


「なーんか、いつものSっ気が足りない……」

 美琴は部長の後ろ姿を見送りながら、首を傾げる。


「相馬部長は、専務派ですから」


 突然耳元で小さな声が聞こえ、美琴はびくっとのけぞった。

 振り返ると、静かに立っていたのは副社長だった。


「え?! 専務派って?」

「あなたが言ってた『お家騒動』ですよ。僕を副社長の座から引きずり下ろしたい人達……って言えばわかりますか?」

「部長が!?」

 ポンという音と共に、エレベーターの扉が開き、美琴は副社長の後ろから中に乗り込んだ。
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