干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 ――結婚って……なに……?


 走りながら、美琴は心の中で何度も叫ぶ。

 混乱する頭のまま、不安は次から次に押し寄せてきた。


 ――東さん……。東さんなら、何か知ってるかも知れない。


 美琴がエレベーターホールに着いた時、ちょうど扉が開くのが目に入った。

 美琴は、ぼやける視界のまま胸をぎゅっと両手で強く抑え、エレベーターに飛び込んだ。


「きゃ……」

 その瞬間、美琴は誰かに思いきりぶつかり、床に尻もちをついていた。

「いててて……」

 聞き覚えのある声に慌てて顔を上げると、同じように床に尻もちをついている健太の顔が目の前に見える。


「東さん!」

 美琴は思わず叫ぶと、(すが)りつくように健太の両肩に手を置いた。

「聞きたいことがあるんです!」

「へ……?」

 健太は突然美琴に迫られる態勢になり、驚きで目をぱちくりさせている。


 お互いしばらく茫然と見つめあった後、健太は慌てて美琴の手を持ち立ち上がらせた。

「美琴ちゃん。びっくりしたよ……」

 健太はそう言いながら、床に転がっている美琴のスマートフォンを拾い上げる。

 画面には、さっきまで美琴が開いていたあのSNSが映し出されていた。

 その画面を見た瞬間、健太の動きがぴたりと止まる。
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