干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「これって……?」

 画面を覗き込む健太の右手から、美琴は慌ててスマートフォンを受け取った。

「前に話してたSNSなんです。励まして欲しくて開いたんですけど、もうずっと更新がなくって……」

 美琴はスマートフォンの画面を見つめてから、大切そうにぎゅっと胸に抱える。


「前に雅也が、自分のだって言ったSNSって、それ?」

「そうです。でも本当は、水上さんのじゃなかった」

「雅也のじゃないって、どういう事?」

「『嘘ついてた』って言われました」

 健太はしばらく顎に手を当てていたが、ふと顔を上げるとエレベーターの扉を指さした。


「とりあえず、外に出よっか?」

 美琴は小さく頷き、健太と共にエントランスを抜ける。


 オフィスビルの間には、小さな休憩スペースにも使える公園があり、二人はベンチに腰かけた。

 会社の外は爽やかな風が吹いている。

 いつの間にか季節は新緑の時を迎え、街路樹のみずみずしい若葉は風が吹くたびに、さわさわと笑い声を上げるように揺れていた。


「東さん。副社長が結婚するって……本当なんですか……?」

 美琴は、再び瞳が潤んでくるのを感じながら健太を見つめる。

「え?! もう美琴ちゃんの耳に入ってんの……?」

 健太はぎょっとした様子で身体をのけ反らせると、頭に手をやった。
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