干物のミカタ ～副社長！ 今日から私はあなたの味方です！～

「さっき、たまたま休憩室で噂話が聞こえて……。瑠偉くんも、昨日副社長が女性と車で出かけたって話をしてて」

「そっかぁ……」

　健太は、はぁと深くため息をついている。


「うーん。ここで嘘ついてもしょうがないから、本当の事を言うけど……」

　美琴は息を呑んで健太を見つめた。

「俊介に結婚話が出てるのは事実。って言ったって、俺もさっき聞いたばっか。そんでもって、俊介自身も昨日初めて知ったらしい」


「そんな……！」

　美琴は目を見開いて、口元を手で覆う。

「当然、俊介は抵抗してるよ。でもね、相手が悪すぎるんだよ……」

　健太は再び深くため息をついた。


「鷺沼造園ですか……？」

　美琴も、鷺沼造園の名前は知っている。

　グリーン業界のドンと裏で呼ばれるほど、この業界での力は他を寄せ付けないものだと聞いていた。

　そことのパイプができるとなれば、社長が飛びつかない訳がない。


「俺はね、俊介と美琴ちゃんが本当に想い合ってるのを知ってる。でも、世の中には抗(あらが)えないものもあるんだよね。悔しいけど」

　健太は、膝に両肘をついてうつむいた。