干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 部長の声に、美琴はカレンダーに赤マルをつける。

 ちょうど展示会の一週間前に、すべての植物が揃う予定だ。


「そ、そうか。かなりの量だから、それまでに倉庫も片付けて、場所の確保しなきゃですよね?」

 滝山が「忘れてた!」と言いながら慌てた様子を見せた。

「あ! 俺、今からその準備してきます」

「私も!」

 瑠偉と胡桃がそろって手を上げたかと思ったら、もうフロアを駆け出していく。

 あまりのフットワークの軽さに、美琴が呆気に取られていると、部長が笑いながら美琴の肩を叩いた。


「最近のあの二人の突っ走り具合、干物に似てきたな」

「そうですか?! お株を奪われないように頑張ります」

 美琴はにんまりして答えると、部長と滝山と笑い声を上げる。


 ――今は、こんな他愛もないやり取りに救われる……。


 美琴はふと俊介の顔が頭に浮かび、慌てて首を振った。


「滝山くん。私先に出て、エントランスの壁面装飾のメンテしてから温室に行くね!」

 美琴はできるだけ明るい声で滝山に継げると、そのままフロアを後にした。


「だ、大丈夫ですかね。友野さん。結構、無理してそうですけど……」

「あぁ。そうだな。でもこればっかりは、俺らじゃどうしようもない」

 部長と滝山は、顔を見合わせて深くため息をついた。
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