干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「東くん、副社長あての郵便……って、お客様でしたか。すみません。さっき副社長はエントランスで見かけたから、てっきり東くんだけかと……」
男性はそう言い残すと、慌てた様子で退出する。
――いやいやいや……。その情報、今言わないでよ……。
健太が恐る恐る引きつった笑顔を向けると、由紀乃は口元をほころばせている。
「エントランスってあの壁面装飾がある所ですよね? 一度見てみたかったんです」
「あ、いや。今はお待ちください。副社長に案内させますんで……」
健太の必死の制止もむなしく、由紀乃を乗せたエレベーターは静かに扉を閉じた。
エレベーターの中で由紀乃は、初めて俊介を知った日の事を思い出していた。
父のデスクに置いてあった、イベントのデザインが紹介された雑誌。
開かれたページに載っていた壁面装飾を見た時、由紀乃は今まで見たこともないデザインに目を奪われていた。
そして紹介文の横には、“副社長”の文字と共に知的で誠実そうな男性の写真があった。
その整った顔立ちの中の人の心を射抜くような瞳を見た瞬間、由紀乃は恋に落ちていた。
それからしばらくして、自分にその人との結婚話があると知った時は運命だと思った。
「私は俊介さんの妻になるの。鷺沼の力を最大限に使って……」
由紀乃は舞い上がるような気持ちで、点滅するエレベーターのランプを見つめていた。
男性はそう言い残すと、慌てた様子で退出する。
――いやいやいや……。その情報、今言わないでよ……。
健太が恐る恐る引きつった笑顔を向けると、由紀乃は口元をほころばせている。
「エントランスってあの壁面装飾がある所ですよね? 一度見てみたかったんです」
「あ、いや。今はお待ちください。副社長に案内させますんで……」
健太の必死の制止もむなしく、由紀乃を乗せたエレベーターは静かに扉を閉じた。
エレベーターの中で由紀乃は、初めて俊介を知った日の事を思い出していた。
父のデスクに置いてあった、イベントのデザインが紹介された雑誌。
開かれたページに載っていた壁面装飾を見た時、由紀乃は今まで見たこともないデザインに目を奪われていた。
そして紹介文の横には、“副社長”の文字と共に知的で誠実そうな男性の写真があった。
その整った顔立ちの中の人の心を射抜くような瞳を見た瞬間、由紀乃は恋に落ちていた。
それからしばらくして、自分にその人との結婚話があると知った時は運命だと思った。
「私は俊介さんの妻になるの。鷺沼の力を最大限に使って……」
由紀乃は舞い上がるような気持ちで、点滅するエレベーターのランプを見つめていた。