干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「副社長。ここはみんなが通る場所です。どこで鷺沼の人が見ているかわからないですよ……」
美琴がそっと顔を上げると、俊介は悲しく傷ついたような顔をしている。
美琴は声を出して泣きだしそうになるのを、必死に堪えるようにうつむいた。
「少しだけ、話をさせてください」
しばらくして聞こえた俊介の弱々しい声に、美琴は小さく頷く。
美琴はバケツを抱えると、俊介の後について歩き出した。
――本当に、今日が最後かも知れない……。
目の前をゆっくりと歩く、背の高い俊介の後ろ姿を見上げる。
美琴はその優しく愛しい背中を忘れまいと、じっと見つめながらエレベーターホールに立った。
ポンと音が鳴り、エレベーターの扉がゆっくりと開く。
意気揚々とフロアに足を踏み出した由紀乃は、隣のエレベーターに乗り込む人影が目線の端に映った。
その瞬間、自分の全身が凍り付くのがわかる。
エントランスの正面にそびえ立つ壁面装飾なんて目に入らなかった。
由紀乃は扉の閉じたエレベーターを振り返ると、点滅するランプの上昇を、肩を震わせながらじっと見つめていた。
美琴がそっと顔を上げると、俊介は悲しく傷ついたような顔をしている。
美琴は声を出して泣きだしそうになるのを、必死に堪えるようにうつむいた。
「少しだけ、話をさせてください」
しばらくして聞こえた俊介の弱々しい声に、美琴は小さく頷く。
美琴はバケツを抱えると、俊介の後について歩き出した。
――本当に、今日が最後かも知れない……。
目の前をゆっくりと歩く、背の高い俊介の後ろ姿を見上げる。
美琴はその優しく愛しい背中を忘れまいと、じっと見つめながらエレベーターホールに立った。
ポンと音が鳴り、エレベーターの扉がゆっくりと開く。
意気揚々とフロアに足を踏み出した由紀乃は、隣のエレベーターに乗り込む人影が目線の端に映った。
その瞬間、自分の全身が凍り付くのがわかる。
エントランスの正面にそびえ立つ壁面装飾なんて目に入らなかった。
由紀乃は扉の閉じたエレベーターを振り返ると、点滅するランプの上昇を、肩を震わせながらじっと見つめていた。