干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「由紀乃さん? 何のことだ?」

 訳がわからないと再度首を振る俊介に、健太が大袈裟に手を上げた。

「え? ちょっと待って! お前、今までどこにいたんだ?」

「すまん……。屋上に……」

「屋上?! ……ってことは、美琴ちゃんと一緒だったって事?」

 頷く俊介に、健太は腰に手を当ててはぁと大きくため息をついている。


 俊介は健太の横を通りデスクに向かおうとして、テーブルに湯飲みが置きっぱなしになっているのに気がついた。

「誰か来たのか?」

 その声に、健太ははっとして俊介を振り返る。

「そうだよ! 由紀乃さんが来たんだよ! ここに! それで引きとめたんだけど、俊介の事を追いかけてエントランスまで行っちゃって……」

 健太はそこまで言うと、次第に顔を青ざめさせる。

「お前に会ってないのに、上機嫌で帰ったってどういう事だ……? 大丈夫だろうな? 美琴ちゃんと一緒にいる所、見られてないよな?」

「いや……わからない」

 俊介は一瞬困惑した表情を見せる。


 エントランスには確かに人影はあったが、それが由紀乃だとは認識しなかった。

 健太が不安そうな顔を向ける。

 俊介は腕を組みながら、嫌な予感が脳裏をかすめていた。
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