干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「俊介さん。遠慮なくお父様を頼ってください。私も俊介さんのお役に立ちたいですわ」

 由紀乃は、ほほ笑みを浮かべながら俊介を見上げている。

 俊介は、全身の血の気が失せるような感覚に襲われていた。


「少し……お時間をいただけませんか……」

 俊介は自分の中で湧き上がる怒りの感情を抑え込むように、青い顔を向け小さく言う。

「俊介!!」

「もう少しだけ、時間をください……」

「お前、鷺沼社長がここまでしてくださっているのに! 自分が何を言っているのかわかっているのか!」

 社長は、今にも俊介につかみかからんばかりの勢いで怒鳴り散らした。

 俊介の背後からは、健太が凍り付く様子が伝わってくる。


「わかっています。わかっているからこそ、少しだけ考える時間をください」

「ほお……」

 鷺沼が顎をさすりながら声を出した。


「俊介くん。うちも準備に時間が必要だ。明日の午前中まで待ちましょう。それ以降はお願いされても植木の提供はできない。よくよく考えることだな」

 鷺沼の凄みのある脅しの言葉に、社長の顔は恐れおののいている。

 俊介は深々と頭を下げると、社長室を後にした。
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