干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 部長は、美琴が飛び乗ったエレベーターの行先を見つめていた。

「屋上……?」

 部長は首を傾げながらエレベーターを降りる。

 ゆっくりと取っ手を回すと、外につながる扉は鍵が開いていた。


「こんな所あったのか……」

 部長は初めて知った屋上の存在に、驚きながら外に出る。

 急に日に照らされて一瞬目を細めてからそっと顔を上げると、目線の先で美琴が顔をうずめて泣いている様子が映った。


「干物!」

 部長は思わず声を張り上げながら、美琴の隣に駆け寄った。

 そして大きな手で美琴の頭に触れると、そのままガシガシと何度も頭を撫でた。


「もう、一人で泣くな。お前はよく頑張った……」

 そう言う部長の声も震えている。

「部長……」

 美琴は、真っ赤に腫れあがった目で部長の顔を見上げた。

 涙は止まることなく次から次に溢れてくる。

 部長は小さく何度も頷き、そのまま美琴を泣かせてくれた。

「今日だけ、俺の胸を貸してやってもいいぞ。まぁ、こんなオヤジじゃ不満だろうけどな」

 頭をかきながら言う姿に、美琴は鼻をすすりながら笑った。
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