干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 スマートフォンを握りしめる美琴に、みんなは笑顔でうなずいた。

「もちろん、良いに決まってんじゃないっすか!」

 瑠偉の明るい声がフロアに響き、美琴はぱっと顔を上げる。

「よし! お前ら明日からまた忙しくなるぞ。今日はもう全員帰って寝ろ!」

 部長がしっしっと手を振り、明るい声はしばらく美琴を包んでくれた。



 会社のエントランスを出た後、美琴は一旦振り返ってビルを見上げる。

 副社長室があるであろう階の窓には、まだ電気がついていた。


 ――副社長。私はまた前を向いて進みます。たとえあなたに会えなくなっても……。


 美琴は心の中でそうつぶやくと、駅に向かって歩き出した。



 美琴が帰ったのを確認した後、滝山はこっそり部長の側に寄った。

「と、友野さんって屋上にいたんですか?」

「あぁ。屋上に出られるなんて知らなかったな……」

「じ、じゃあ副社長に会いましたよね? あの後、エレベーターで追いかけて行ったんですけど」

 滝山の言葉に部長は驚いた様子で振り返る。

「いや……来なかったぞ」

「え?!」

 部長は額に手を当てながら、困惑した表情を浮かべていた。
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