干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 今回の装飾は、使用する樹木もその他の岩などのディスプレイも大型のため、専門の運搬業者に移動を依頼している。

 美琴は手早く荷物を置くと、すぐに世話しなく動き出した。


 次々に運ばれるものを、一点ずつ確認しながら配置させる。

 みんな汗だくになりながら作業を進めた。

 そしてばたばたと忙しく動きながらも、美琴の心はどこかで俊介の事を考えている。

 『必ず、見に行きます』

 そう屋上で言っていた俊介の言葉が、何度も繰り返し聞こえていた。


 ――みんなで造る副社長の大切な景色。本当は見て欲しい……。


 そんな想いはどんどん募っていった。



「できたー!」

 夕方頃、最後にコットン生地の白いベルテントを設置して、ついにメインスペースの装飾が完成した。

 瑠偉の大きな声と共にみんなで一斉に手を叩く。

 美琴と滝山は装飾の中に入り、試しに全てのランプの(あかり)をともした。


 その瞬間、このメインスペースの部分だけが森の中へ切り取られたかの様に浮かび上がる。

 滝つぼのコバルトブルーの色とテントの中のオレンジ色が対比して、幻想的な空間が演出されていた。

 胡桃が思わず泣き出し、美琴も目を潤ませながらその空間を見つめていた。
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