干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「美琴……」

 自分の名前を呼ぶ低い声が聞こえ、美琴は涙でぼやける瞳のままそっと顔を上げた。

 目線の先には、会いたくて会いたくてたまらなかった顔が見える。

 美琴はスマートフォンを胸元でぎゅっと握り締め、前へと向かって足を踏み出した。

 画面に映し出されたコメントは、美琴の手の中で揺れている。


 “これからもずっと、僕はあなたの味方です”


 “愛してる”


 はやる気持ちを抑えきれず、美琴はいつしか駆け足で俊介に向かっていた。


「俊介さん……」

 美琴は、涙を溢れさせながらその名を呼ぶ。

 俊介は駆け寄って来た美琴を抱き上げると、そのまま力いっぱい抱きしめた。

「美琴……。待たせてしまってごめん」

 美琴はそうつぶやく俊介の首にしがみつき、自分の顔をぐっとうずめると何度も首を振った。

 俊介の熱や鼓動が、身体へと徐々に伝わってくる。

 美琴はそれをもっと近くで感じたくて、ぎゅっと両手に力を込めた。


 しばらくして、俊介は美琴をそっと立たせると、指で美琴の頬の涙をぬぐった。

「もう、会えないと思ってました……」

 美琴は絞り出すように、小さな声を出す。

「必ず見に行くって言ったでしょ? 少し、遅くなっちゃいましたけど」

 俊介はほほ笑んでそう言うと、小さく肩をすくめた。
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