干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 副社長は慣れた様子で、ファーストフードに入り、持ち帰りのハンバーガーセットを二つ注文する。

「友野さん、飲み物は?」

「あ、アイスコーヒーで……」

「じゃあ、アイスコーヒー二つ……それと……」


 ――こんないいスーツ着た人が、ハンバーガー頼んでるよ……。

 美琴は、少しドキドキする不思議な気持ちで、副社長の後ろ姿を眺めていた。



「どこ行くんですか?」


 ハンバーガーが入ったビニール袋を、揺らしながら前を歩く副社長の背中を、小走りで追いかける。

「ちょっと気分転換に……」

 そう美琴に言い残すと、副社長は券売機でチケットを購入している。


「あ、ここって……」

 横を向くと、美琴の目の前には、ざわざわと風に葉を揺らし音を立てる、大きな木が広がっていた。



 手渡されたチケットを持って、入り口から中に入る。

 一歩中に入った途端、今までの街の喧騒が消し飛んでしまったかのように、静けさに包まれた。


 そこは都会のビルの真ん中に位置する、広大な森だった。
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