干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「友野さんのエンゲージリング、キラッキラでしたね。いいなぁ。今日は結婚式の打ち合わせって言ってましたっけ?」

 胡桃がうっとりとした顔を滝山に向けた。

「そ、そうらしいね……。どこで式を挙げるのかは聞いてないけど」

「社長の結婚式っすよ! 絶対に一等地の超豪華なホテルっすよ! 当然、俺たちも呼ばれますよね?! 部長」

 瑠偉が部長に声をかけ、みんなが一斉に振り返る。


「あ? どうだろうな?」

 部長はしばし考えるフリをしてから、にやりとみんなを見つめた。

「まぁでも、お前らよく考えろよ。あの干物だぞ。常識で考えちゃいけないな」

 部長は楽しそうに大きな笑い声をたてていた。



 美琴は俊介と共に、弾むような気持ちで廊下を歩いていた。

「なかなか時間が取れなくてごめん」

「そんな! 俊介さんは忙しいんですもん。気にしないでください」

 美琴はそう言いながら、見上げた俊介の顔が一瞬強張(こわば)るのを感じる。

「俊介さん?」

 慌てて振り向くと、目の前には拳を握りしめた朔人が静かに立っていた。


「兄さんは何もかも思い通りになって、さぞかし満足でしょうね?」

 朔人は小刻みに震えている。

「何を言っている?」

「お父さんから言われましたよ。僕を子会社に連れて行くって……」
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