干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

エピローグ

「……ったく。何が悲しゅうてスーツにスニーカーで山道を登らにゃならんのだ……」

 部長はひいひい声を上げている。

「こ、この渓谷が二人の大切な場所だから……ですよね」

「にしても、挙式をこんな山ん中で挙げるって、前代未聞っすね」

 瑠偉は滝山に話しかけながらスーツの上着を脱いだ。


「ほらほら! 文句言ってないで、しっかりついて来いよー」

 みんなのボヤキに健太が喝を飛ばし、その隣では雅也が楽しそうに笑っている。


 季節はめぐり、また新緑の時を迎えていた。

 良く晴れた今日は、美琴と俊介の結婚式が行われる。


「で、でも呼ばれてるのは僕らだけでしょ?」

「だって、ここに年取った親族なんて呼んだら警察沙汰っすよ!」


 美琴と俊介のたっての願いで、挙式のみ渓谷で執り行うことになった。

 あの滝つぼの周辺は流れも強いため、場所は流れが穏やかな川縁(かわべり)で行う。


 挙式に招待しているのは緑化事業部のメンバーと雅也のみで、持ち物はスニーカーという指示付きだった。

 その他の親族や招待客は披露宴から参加する。
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