干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

信じる気持ち

 美琴は、はぁはぁと肩で息をしながら廊下を走っていた。


 ――なんで……なんで部長はこんなこと……。


 部長を問い詰める気で温室を飛び出したのに、まだ心のどこかでためらいがあった。

 そうする内に、メンテナンス部の扉の前に着く。


 美琴は目を閉じて一旦息を吐き、静かに扉を開けた。

 つい数日前まで、自分のデスクがあった場所なのに、その部屋はどこかよそよそしさを感じさせた。


「部長」

 美琴は、部長がデスクにいるのを見つけると、ゆっくりと歩み寄った。

「ん? どうした?」

 口ではそう言いつつも、部長は美琴が押しかけた理由がわかっている、そんな目をしている。

「温室に……電話しましたよね」

 美琴は気持ちを落ち着かせるように、声を抑えて言った。

「……あぁ。そのことか」

 部長は美琴から、するりと目を逸らす。
< 64 / 435 >

この作品をシェア

pagetop