干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「人が落ちたぞって大騒ぎだったんだから!」

 おばちゃんは美琴の前に、お茶の入った湯飲みを置いた。


「なんでもたまたま通りかかった人がいてね。落ちかけたあんたの手を掴んだんだって。それでここに連れて来たってわけ」


「そっか……私……助けてもらったんだ……」


 美琴はコップのお茶を一口、口にする。

 ぬくもりが体中に染み渡り、だんだんと生きていることを実感してくる。


「あの……私を助けてくれた人はどちらに?」

「何人かで助けたみたいだけど、とにかく大騒ぎだったからねぇ。誰が誰だかあたしにもわかんないのさ」

「どなたかお一人でも、連絡先とか知りませんか?」

「あんたに怪我がなさそうだって、みんな安心して帰って行ったからねぇ。後で店の(もん)にも聞いてみるよ」


 おばちゃんは立ち上がり、窓際のレースのカーテンを開けた。

 太陽はちょうど真上にある頃だろうか。

 部屋の中が一気に明るくなり、美琴は目を細めた。
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