干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 駅前からバスに乗ること小一時間。

 “渓谷入り口”と名前がついたバス停で下車する。

 美琴は一旦、目の前に広がる森の景色に両手を広げて深呼吸をしてから、渓谷の玄関口に位置している土産物屋に入った。


「こんにちはー」

 美琴が様子を伺うように店先から顔を覗かせると、奥からぱたぱたという足音が聞こえた。

「はーい。ただいま……」

 そう言いながら出てきたおばちゃんは、美琴の顔を見ると悲鳴のような声を上げる。


「あんた! この前の落ちた子だろ?! 心配してたんだよぅ」

 おばちゃんは駆け足で近づくと、両手で美琴の腕を何度もさすった。

「あの時は本当にご迷惑をおかけして……すみませんでした」

 美琴は気恥ずかしくなり、上目遣いでおばちゃんを見ながら小さく頭を下げた。


「どこも怪我してなかったかい?」

「はい! この通りぴんぴんです。あっ、これ。ご迷惑をおかけしたので、少しですけど」

 美琴はそう言って、紙袋に入ったお菓子を手渡した。
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