干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「えっと、今日はここに挨拶に来ただけで、山登りではないんです……」

 美琴はそう答えながら、横目で男性をそっと見る。

「へぇ」

 笑顔でそう言いながら汗を拭う男性に、美琴は一瞬で目を奪われた。


 ――こんな山奥に、なんちゅーイケメンじゃ……。


 黒のサファリハットからのぞく、さらさらとした長い前髪。

 顎辺りまでの長めの髪は、後ろで一つに結ばれている。

 そしてにこやかに笑うと、細くなる切れ長の目。

 副社長とはタイプが真逆だが、目を見張るほどのイケメンぶりは同じだ。


 ――副社長が硬派なら、この人は軟派になるのかな……? にしても、やたらと色気がある人だな。


「どうかした?」

 一人で悶々と考えていると、突然顔を覗き込まれ、美琴は思わず飛びのいた。

「ひっ」

 変な声が出た瞬間に、つい指が自分のスマートフォンを触ってしまう。

 消えていた画面に、さっきまで見ていたSNSの画面が映し出された。
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