腕の中で、愛でる
『華澄!!怪我したってなんだ!!?
誰にやられた!?
御影は!?御影はどうしてたの!!?
あいつがいてなんで!?』

「━━━━━って!
あ、でも、大丈夫!ちゃんと、説明したから!」



そして18時になる前に澄義が帰ってきた。
「華澄!」
「あ、パパ。おかえ━━━━━」
「怪我は!?」

「あぁ、だから!ただの突き指!」

「御影がいてなんで、華澄が怪我するんだ?」

「だから!体育は、男女別々なの。
みぃくんは、何の非もないよ!」
「澄義、ごめん!」

「………わかった」
少し、不服そうだったが何とか納得した澄義。



「━━━━━じゃあ、また明日!カスミン!」
「うん!おやすみなさい!」
御影が帰り、華澄は部屋に戻った。

しばらくして、スマホが震え出す。
画面を見ると“しずくん”の文字。

「なんだろ?
…………もしもし?」
『華澄?今、大丈夫?』

「うん!どうしたの?」

『怪我、大丈夫?』
「え?うん!大丈夫だよ!
もう(笑)みんな、大袈裟だよ!」

『だって。
好きな子が傷ついてるの見たら、例え軽傷でも心配するに決まってるよ?』
「え?好きな子?」


『そうだよ。僕は、今でも、華澄が好きだよ!』


飛馬と同じ顔、同じ声………背格好まで似ている。
そんな人の“好きだよ”の言葉。

「…………やめて…」

『え?華澄?』
「私は、みぃくんが好きなの」

『うん、わかってる。だから、身を引いてる』

「みぃくんが、私を立ち直らせてくれた」

『うん。父さんに振られた時でしょ?』

「………そうだよ」

『ねぇ、一つ正直に答えてほしいんだ』

「何?」


『あの時………
もし僕が、中学も一緒にいることが出来てたら……
それで、父さんに振られた華澄を僕が支えてたら、僕と御影どっちを選んでた?』


「え………」


その頃、御影が華澄の部屋のドアを開けようとしていた。
華澄を驚かそうとして、ゆっくり静かにドアを開ける。

「━━━━━もし…中学もしずくんと一緒だったら、きっと私………」

「え………かす…み…?」



「しずくんを好きになってたかもしれない━━━━━━」
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