腕の中で、愛でる
うっとりとして微笑む御影と、恥ずかしそうに逸らす華澄。

そんな二人を微笑ましく見ながら、澄義が声をかける。
「ほら、早く行かないと遅れるよ」

「あ、ほんとだ!
カスミン、行こ?」
「うん」

手を差し出す御影の手を、キュッと握る。
そのまま手を引かれ、玄関を出る。
澄義も一緒に仕事に出る。

鍵を閉めていると、隣の玄関から千影が出てきた。

「お、まだ行ってなかったのかよ!?」
「おはよ、千影」
「おはよ、スミ、華澄」

「おはよう、ちぃくん!」

「千影!ちょうど良かった!
俺も、蓮義の飲み会行きたい!」
「は?なんで知ってんの?」

「澄義に聞いた」
「はぁ!?なんで言うんだよ!?」

「だって、この前かなりショック受けてただろ?
だから今回は、ちゃんと誘ってあげた方がいいかなって」
「御影は、めんどくせぇの!
御影、来んな!」

「えー!!やだ!
カスミンと行く!」

「え?え?待って!みぃくん」
「ん?なぁに?」

「パパ達の蓮義の飲み会の話してるんだよね?
私は、行かないよ」
「え?なんでぇー!」

「怖いもん。
だから行かない。
みぃくん、一緒に留守番しよ?
夜一人は怖い」
「……/////」
御影を見上げ、少し首をかしげて言った華澄。
そんな華澄に顔を赤くする、 御影。

「みぃくん?」
「可愛すぎ…/////
もう一回言って?」

「え?
飲み会は、怖いから行かないよ」

「違うよ!
“みぃくん、一緒に留守番しよ?”ってやつ」

「あぁ。
みぃくん、一緒に留守番しよ?」
「するーーー!留守番するー!
澄義。俺、やっぱ行かない!」

「単純な奴(笑)」
「そうだな(笑)」
千影と澄義が笑う。

千影と澄義は、幼馴染みで同い年。
澄義の妻で、華澄の母・華凪(はな)は華澄が三歳の時に亡くなっている。
なので、華澄と澄義は御影や千影と昔からずっと一緒だ。
その為、華澄にとって千影も父親のようなもので、御影は兄妹のような関係だ。

澄義も会社を経営していて、四人は家族のように仲が良い。


「二人、送るから乗りなよ」
澄義が微笑む。

「パパ、ありがとう!」
「澄義、サンキュ!」

「スミ、甘やかすな!
学校くらい、歩いて行かせろよ!」
「まぁ、いいじゃん!」

苦笑いの千影を置いて、澄義は二人を乗せ出発させた。

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