プリズムアイ


「子孫を残せる身体のほうが強いんだよ。全部がそうとはいわないけどメスが産卵中や産卵後に交尾したオスを食うことあるじゃん。性的な共食いっていうらしいよ。人間社会はルールと理性で秩序が成り立っているけど、後輩は自然界と近い本能的に行動しているよね。普通、これからお世話になる先輩にそんな小さなことしてわざわざ怒らせるメリットある?って思うだろ。その時自分が楽になれるほうでしか選べてないんだよ」

「たしかに」

「あとそういう女性増えてるんだって。本能が発達しすぎて、理性が追いつかないんだって」

そういって彼は目をふせた。背を丸めて、前髪をかきあげたとき彼の瞳はプリズムに犯されていた。悍ましい後輩と同じオパールの綺麗な見たことのない瞳に。彼は膝立ちになって、私を見下ろした。私の大嫌いな瞳が全身を嘗め回すように見下ろした。少しずつ近寄ってくるのが、恐ろしすぎて腰が抜けてハイハイで台所のところに向かう。
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