もう一度わたしと、恋をしてください。
第一章
優しい彼
最悪だ。本当に、最悪。
ヒュルリと冷たい北風がわたしの頬を突き刺すように撫でつけた。
それはまるでわかりやすく落ち込んでいるわたしを嘲笑っているかのよう。
通学用のリュックのベルト部分をぎゅっと握りしめて、思わず漏れたため息にそっと苦笑いした。
ギャハハとお世辞にも品があるとは言えない笑い声をあげ、学校の正門を塞ぐ集団。
自転車にまたがり、学校に用事があるわけでもないだろうに、帰りもせずにダラダラと長話をしてずっとその場を占領しているのは、
野球部だ。
野球部って聞くと、一般的にどんな印象を抱くものなんだろう。
わりと共通して“礼儀正しい”とか“硬派”な印象だと思うけど、この学校の野球部はその言葉から一番かけ離れた存在な気がする。