もう一度わたしと、恋をしてください。
「なんで知ってるのって顔してるけど、金曜にクラスのグループでさんざんからかわれてたじゃん」
そう言いながら慣れた手つきで景ちゃんから解放してくれたのは、同じクラスの男友達、近江海。
特に、景ちゃんは、この近江海とは一番仲良しだったりする。
なんでも小学校からの幼馴染で、家も近所だって言ってた。そして景ちゃんの片思いの相手でもある。
ていうか、そうだった。誰が見たか知らないけど、金曜日の夜はわたしと星野くんが帰ってたって話題でグループの通知がすごくて、当事者であるわたしは恥ずかしくて必死で否定してた。
もしかして付き合ってるんじゃないかとか色々質問責めされてものすごく大変で、そのうち何言ってもからかわれるから通知を切って既読スルーしてたんだった。
「そ、そうだった」
「ねえ、海、トーコの記憶力をナメない方がいいよ? この子、記憶3分くらいしかもたないから」
「あー、わるい、橙子は鳥頭だったよな?」
2人とも本当に好き放題言うんだから。
切れ長の目をキュウッと細めた海の笑顔は、危うくときめきそうになるくらい眩しい笑顔。
海はめちゃくちゃモテる。星野くんみたいにすごく整った顔をしているわけではないけど、悪いってわけでもない。
切れ長の目に、筋の通った鼻、笑うときゅっと口角が上がって、笑顔は結構かっこいい。というか、可愛い…?
背が大きいのもモテる要素なんだと思う。たしかこの前保健室で友達と測ったら173だったって言ってた。入学当時から6センチも伸びたんだとか。
その上、ものすごく社交的で誰とでも分けへだてなく喋るし、冗談も結構言う。一緒にいて楽しい人だと思う。そしてなによりも、誰にでも優しい。
わかりやすい優しさではないけど、わりと人の感情に敏感みたいで、常にさりげなく周りに気を配っているのを、わたしは知ってる。