もう一度わたしと、恋をしてください。


怒ることも滅多にない。というか、わたしは一度も見たことない。

初めて話した時に、クラスメイトなのに名前を覚えていなかったうえに、『なんか海洋の名称みたいな名前だね』って思わず失礼なことを口走ったときも『それは俺もずっと思ってた』って笑ってくれた。

困っている人がいればさりげなく助けるし、女子にモテモテなのも頷ける。



ただ欠点があるとしたら、告白されたら誰とでも付き合っちゃうところ。いわく、「だって泣くから」だそうだ。

海のそういうところ、わたしは正直あんまり好きじゃない。だって、その度に景ちゃんが傷つくところ、見てるから。


「ま、じゃあ今日の昼休みにでも話聞かせてもらうわ」

「え? いやぁ、でもグループで話してたこと以上のことはないと言うか…」

「全部、洗いざらい、話してもらうからね!」


笑顔で圧をかけてくる景ちゃんにこくこくと頷いて恐怖にぶるりと肩を震わす。

景ちゃんの怒った顔、まじ般若。
美人って怒ると迫力あるよね…。


「頑張れ橙子」

「…ちょっと海、そのノートすごい見覚えあるんだけど?」


海がいつの間にかわたしの前の席に腰かけていると思ったら、その手元には見覚えのあるミントグリーンのノートブック


「お、よくわかったな? これお前の」

「だよね?! なに勝手に写してんの?!」

「いーじゃんかよ、減るもんじゃないし」


確かに減るもんでもないけど!


「自分で宿題やらないと成績下がるよ!」


返してもらいたい一心でそう言ったのに、海はそっかと手を叩いて納得したような顔をする


< 16 / 27 >

この作品をシェア

pagetop