もう一度わたしと、恋をしてください。
「ねえ、海ってさ、星野くんと仲良しだったりしない?」
あっという間に放課後になった。
景ちゃんはというと、ホームルームが終わると「今日引退した先輩が顔出すんだって」とゲンナリした顔でそそくさと部活に行ってしまった。
かなり久しぶりに海と二人きりになった。
お互いに部室に向かうため、廊下を歩いている時に勇気を出して言った言葉に、海は少し考えたあと、首を横に振る
「や、仲良くはない」
「…だよね。クラスも部活も違うもんね〜…」
「でも連絡先は知ってる」
「そーだよねぇ………って、え!?」
パッと顔を上げれば、にやりと笑った海が目に入る
「橙子さぁ、駅前のクレープ屋知ってる?」
「へ?あぁ、あの新しくできたところ?」
なんの脈絡もない話題に怪訝な顔をしつつも頷くと、海は廊下の壁にもたれて人差し指を立てわたしに突き出してくる。
「そ。そこの特盛いちごバナナチョコスペシャルで手を打ってやるよ」
「…は?」
「星野の連絡先、知りたいんだろ?」
ま、まさか、教えてくれるの?!
慌てて海の隣に並んで、廊下に背を向けて制服のプリーツスカートのポケットからスマホを取り出すと、聞いただけで胸焼けしそうなメニュー名と駅前のクレープ屋さんの名前を入れて検索をかける
特盛いちごバナナチョコスペシャル…980円?!高っ!
ていうか、
「海って、甘いもの好きなんだ…」
「んだよ、悪いか」
「いえ、全然。これを奢れと…?」
「ん、てか付き合ってくんない? 俺一人で食いに行くの恥ずかしいんだよ」
ぽりぽりと頬を掻く仕草をして恥ずかしそうに視線を逸らす海にぷっと吹き出す。
確かにネットに掲載されたお店の外観はピンクやら紫やらでちょっとメルヘンチックな感じで、男の子一人で行くのは恥ずかしいかも