もう一度わたしと、恋をしてください。
今日の部活の練習メニューはいつもよりきついものだったし、先輩たちも厳しかったけど、今日のわたしは最強で、きつい練習もへっちゃらで部活を終えた。
帰り、野球部とは被ることなくすんなりと正門を抜ける。
スマホをポケットから取り出して、海から送られてきた連絡先をタップする。
アイコンは野球のグローブとボールが描かれたイラスト。
追加、の文字をタップしてわずか数秒でわたしのスマホに星野くんの連絡先が追加される。
…どうしよう、なんで送ったらいいのかな
どうも思っていない相手なら普通に名前とよろしく!の文言を入れて送信してしまうのだけど、相手は一目惚れした人。
こんな挨拶を送るだけでも悩んでしまうなんて、恋って、なんか難しい。
ニヤける口元をマフラーで覆い隠して、トーク画面を開くけど、文字を打っては消して、打っては消してを繰り返す。
結局なにも気の利いた文章は思い浮かばなくて、とりあえずスマホを閉じて帰路を辿る。
わたしの家はクリーム色の外壁に赤い屋根の二階建て。玄関のドアはダークブラウン。なんだかドラマにでも出てくるような家だねって幼い頃、友達に言われた記憶がある。
家に着いて玄関を開けると、ワン!とペットのダイゴローが飛びついてきた
「ただいま!ダイゴロー」
ダイゴローはオスのトイプードル。
よく名前が合ってないって言われるけど、わたしもそれは思う。
だけど困ったことに、ダイゴローに名前をつけたのはこの私だった。
どうも幼い頃に“名犬探偵大五郎!”というアニメに大ハマりしていたらしくて、そのままその犬の名前をつけたらしい。
そのアニメの犬はビーグルだったけどね。