もう一度わたしと、恋をしてください。
「長沼さん立てそう? 保健室まだ開いてると思うから行こう」
あ、名前…。わたしの名前、どうして知ってるの?
きっと変声期を迎えている最中なんだろう、少し掠れたまだ大人の男性には遠いその透明な声が、わたしの鼓膜を甘く震わす。
「あ…はい、ありがとうございます」
差し伸べられたその手を取って立ちあがろうとしたけど、擦りむいた膝の痛みに顔を歪める。
すぐそのことに気がついた彼は、立ち上がれないわたしの横にしゃがんでにこりと微笑んだ
「無理そう?じゃあ俺の肩に腕回せる?」
「は、はいッ」
言われたとおり、彼の肩に腕をまわすと、彼はわたしの腰に「ごめん、ちょっとだけ我慢して」と言いながら手を添えて、スッと立ち上がらせてくれる。
立って並んでみると、背丈はわたしと同じくらいか、いや、ほんの少し大きい程度。
あまりにスムーズに立つことができたから勝手に背が高くて力があるんだろうなって思ったけど、わたし自身あまり背は高くないから彼も大きいほうではないだろう
「和田、長沼さんの荷物持って着いてきて」
「なんでおれが」
「なんでって、ぶつかったの和田だろ」
そこで彼の他にも、もう一人野球部の人が残っていることにようやく気づいた。