遠距離恋愛は人をダメにする。
ママからの突然のLINE。
それもお怒りモード。

ヤバい。

でも、なぜ?

桃香ちゃんが私の様子を見て…
「晴良ちゃん、どうしたの?」

「う、うん。これ…」
私はスマホの画面をふたりに見せる。

「晴良ちゃんのママ?」
「あ、晴良の母さん?」

ふたりが同時に反応する。

「今日はどこに行ってることになってるの?」

「名古屋」

「ははっ、そうなんだ」
桃香ちゃんがちょっと顔をひきつらせると同時にやるなぁって顔も…

「ヤバいよね」

「うん。ヤバい」

すると、すかさず、またLINEがくる。

【知ってるわよ。日野にいるんでしょ😡⚡️】
【悠ちゃんとまだ居るの?】

うわっ、完全にバレてる。

「あ、きっと、悠ちゃんのお母さんがLINEしたんだよぉ」

「あ、そうだぁ。悠ちゃんのママには私のママもこっちに来てるって言っちゃったから」

「なるほどねぇ。だから悠ちゃんのお母さんが連絡しちゃったんだね」

「どうしよう」

すると、優くんが何事も無かったかのように、どこかにLINEをした。

「?」

そして、私がこんな状況なのに優くんは妙に冷静だ。

「ま、ここにいても仕方がないし、とりあえずマック行こう」
優くんが私たちに言う。

3人はマックに入り、それぞれのオーダーをして、席につく。

その間も、優くんは幾度かLINEをしていた。

どこにLINEしてるんだろう。
まさか、私のママに?
いやいや、優くん、私のママとLINEつながってないでしょ。

すると…またまた、ママからLINEが届く。

【ま、とりあえず、気をつけて今日中には帰ってきなさいよ】

あれ?
お怒りモードが下がってる。

私はママにLINEを返す。

【はーい😢⤵️⤵️】

これで何とかなった…と思う。
きっと。

少し安堵な表情になった私を見て
「どうなった?」
桃香ちゃんが聞いてきた。

「うん。何とかなった。今日中には帰ってこいって」

「良かったじゃん」

「うん。でも、急にどうしたんだろう。あんなに怒ってたのに。あ、もしかして」

私はふと優くんを見る。

「うん?どうした?」

「もしかして、優くんがなんかやった?」

「なんかやった?って、晴良って向こう行って訛った?」

「訛った?はぁ?」

「あ、私も少し思った。微妙にイントネーションが違うよね。ま、私はおばあちゃんの家で聞き覚えがあるけど」

「いやいや、そんなことじゃなくて…私のママに何かやったやろ?」

「でたぁ」
「あ、それそれ。それって尾張弁って言うんだよね」

ふたりは私で遊ぶ。

「ちょっとぉ」

「ま、これ、みんなで食べようよ」
優くんは、トレイにポテトを広げた。

「これってカリカリ派?それともシナシナ派?」
優くんは私たちに聞く。

「俺はカリカリ派かなぁ。だからすぐにこう外に出す。これに入れっぱにすると湯気でシナシナになっちゃうし」

「私は…ここ派」

「はぁ?」

私と優くんは桃香の手にするポテトを見る。
じゃがいもの端っこの部分で、尖った部分。

「ああっ、そこね。そこ、いいよね」

「って、ことはカリカリ派なんじゃん。晴良は?」

「私は…シナシナ派かなぁ。あ、でもカリカリも好きよ。どっちも派」

「ははっ」

「あ、さっき、俺の母さんにLINEしておいたから。晴良がひとりでここに来てるって」

「は?」
突然、話を戻す。

「だろうね」
桃香ちゃんはそうだろうねって顔をする。

「俺の母さんもびっくりしてたけど、今、俺と会ってるって送ったら、じゃあ、晴良ちゃんのママに伝えておくねって送られてきた」

「そ、そう」
私は…本当は素直に“ありがとう”のひと言が言いたかったけど…すぐに出なかった。

と、いうのは…

やはり、桃香ちゃんの反応だった。

彼女の前で、別の女子の困り事のためにさらりと手を貸してくれる。

それは有難いけど…

それに、それにだよ…
“今、俺と会ってる”って…何よ。
彼女の前で、それを言うなよぉ。

桃香ちゃん。独占欲強そうだし…

いつも…優くんって彼女いるのに、他の女子にもこんな感じなのかなぁ…

だったら、桃香ちゃんも大変だよね。

ちらりと私は桃香ちゃんを見る。

すると…
「何、それ。優のママ、最強かよっ」
桃香ちゃんは笑いながら言い、ポテトを頬張る。

ほっ

やはり、私は…このふたりにとって、普段の生活圏内の部外者なんだなぁって痛感したけど、

ま、とりあえず…

桃香ちゃんの表情を見て…安心はした。

「ありがとう。助かった」
と、私は優くんにお礼を言った。

「いっしょに寝た仲じゃん」
と、さらりと優くんは言う。

だ・か・ら、この男は…
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