遠距離恋愛は人をダメにする。
それから数週間が過ぎた。

菜々と彰くんとの間は、進展もなければ後退もない。
ただ、菜々の話を聞いてからは、彰くんをそういう目で見てしまう。

彰くんの嫉妬心

菜々の行動を細かく見ていないようで見ている。
菜々が男子と話をしていると、こちらの方がハラハラする。
それは、例え、それが理科の実験で同じ班の子を話をしていても…

また、菜々本人の話からも逆も見てしまう。

菜々の嫉妬心。

彰くんが女子と話をしていると、ついつい菜々の視線がどこにあるのかを見てしまう。
やはり、菜々も女子と話をしている彰くんを気にしている。

私から見れば、どっちもどっちという気はするが…

“私はいいけど、相手にされるのは嫌”

それでいいんだろうか。

ところで、東京の桃香ちゃんともLINEで繋がっている。

メインは最近の優くんの話。
相変わらず、みんなに優しいらしい。
けっして、八方美人的ではなく、桃香ちゃんの言葉を借りるとすると、“気がきく”らしい。
だから、みんなに手を差し伸べるだそうだ。

桃香ちゃんに嫉妬心が無いわけではないが、それを出さないのが、いかにも桃香ちゃんらしい。

あんな格好いい男子と2人きりでお出かけが出来て、一緒にいる時は、自分に対してだけ優しいんだから、みんなに対して悪気の無い優しさに嫉妬するなんて、バチが当たると桃香ちゃんは言う。

また、LINEでは優くん以外の話も弾む。
いちばんビックリしたのは、なんと桃香ちゃんも吹奏楽部だったこと。
桃香ちゃんは、トランペットをやってるらしい。
同じ吹奏楽部ということで、それぞれの練習の仕方や各地区の課題曲、そして、自由曲などで盛り上がる。

一応、桃香ちゃんの中学校の吹奏楽部は“中”ぐらいのレベルで、コンクールでは“金賞”になるぐらい。
吹奏楽部でない子から見ると「えっ、凄い、金賞なんだ」って思うかもしれないけど、いやいや金賞は数校がもらえるし、オリンピックの金、銀、銅の金じゃないから。
いわゆる、参加賞に毛が生えた程度の賞だから。

桃香ちゃん曰く、なぜか東京都日野市の中学校なのに、つい最近、日曜日の朝のTVKというチャンネルで、ショッピングセンターで演奏した時のが放送されたって言っていた。

「えっ、いいなぁ。緊張した?」

「全然。それより必死で吹いてた」

「上手く吹けた?」

「吹けたと思ってたけど、あとからその放送されたのを学校の視聴覚室で見たら、1回外してた」

「うわっ、トランペット目立つよね。外すと」

「そうなのよ。晴良ちゃんはホルンだからそんなに目立たないよね。失敗しても」

「そうだね。変なところで鳴らさない限り」

「ははっ」

そんな感じで、私と桃香ちゃんとのLINEが続くのである。

桃香ちゃんからみれば、気楽に優くんの話も出来て、利害関係が全く無い、私とのLINEは楽しいみたい。

私もそうだ。

利害関係が無いって、楽だ。

そんな、ある日の木曜日に、私のママが私に言う。
「晴良。今週の土曜日と日曜日って部活ある?」

「うん?無いよ」

「じゃあ、家に居るよね」

「うん。そのつもり」

「朋は?」
今度はお兄ちゃんにも聞く。

「昼は部活だけど」

「土日とも?」

「うん」

「そうなのね」

「なんかあるの?」

「内緒」

「なんだ。それ」
ママもお兄ちゃんも笑っていた。
< 24 / 42 >

この作品をシェア

pagetop