遠距離恋愛は人をダメにする。
優くんが、部屋を出ていっても動揺している私。

そりゃそうだ。

優くんが来るなんて、聞いてない。

うん?

そういえば、木曜日にママが土日に部活があるか聞いた。

そして、金曜日には桃香ちゃんも同じことを私に聞いた。

普通、優くんのママだけが来るなら、あんな聞き方をしなかったかも…だ。

それに、桃香ちゃんも…

あっ、そうだ。
桃香ちゃんは、この週末に…優くんは家族と旅行に行くことを知っていた。

そして…
“私もそっちに行きたい”
って、言ってたのを思い出した。

うわっ、桃香ちゃんは知ってたんだ。

優くんがこっちに来ることを…

だから、あんな話をしたのか。それともさりげなく探りをいれてたのかも知れない。

でも、実際、私は何も知らなかった。

だから、あんな会話になったんだけれども、果たして、本当に桃香ちゃんは疑ってないだろうか。

なんか、無実なのに…無実じゃない気分。

どうしよう。

これは、今すぐにでも、桃香ちゃんに知らせた方がいいんだろうか。

あ、すでに優くんが桃香ちゃんに連絡してたらどうしよう。

あり得る。

悪気もなく“今、晴良の家に到着”なんて送ってたらどうしよう。

うん。
時間が経てば、経つほど、言い訳ぽくなるから、桃香ちゃんに連絡しよう。

あ、部活って言ってたかぁ。

とりあえず、LINEだけでも…

【なんか優くん、来てるんですけど】
【めっちゃびっくり】

すると、すぐに既読が付いた。

【うん。知ってるww】
さらにすぐに返信がきた。

【桃香ちゃん。知ってたんだ】

【うん。優くんから聞いてた】

【そうなんだ。早く言ってよぉ】

【晴良ちゃん。本当に知らなかったんだね】

【だって、うちのママも言ってくれなかったし】

【そうなの?】

【うん。実は今日も知らなかった】

【どういうこと?】

【私寝てたから】

【?】

【勝手にうちの両親と優くんのお母さんが喫茶店行っちゃって。ひとりで寝てた】

【優くんは?】

【優くんは、私の家でお留守番】

【えっ?じゃあ、今、優くん、晴良ちゃんの家にいるの?】

あ、ヤバいかなぁ。
私、変なこと伝えちゃったかも。

【今、リビングにひとりでいると思う】

ここで、しばらく桃香ちゃんのLINEが来なくなる。

うっ、桃香ちゃん怒ったかなぁ。
でも、事実だし、何も隠してないし…
いや、変に隠した方が…ダメだと思うし。

すると、再び桃香ちゃんからLINEが来た。

【晴良ちゃん。優くんに起こされたらしいね】

えっ?
なぜ、それを…

でも、すぐに理解出来た。

きっと、桃香ちゃんは優くんにLINEをしたのだろう。

そして、あの優くんだから、悪気なく、そのまま事実を伝えたのだろう。

【そう。びっくりしたし、ふつう、女子の部屋に勝手に入るかぁ】

【うん。優くん。そう言ってた。晴良に怒られたって】

ふぅ。
何とか、桃香ちゃんに誤解されずに済みそうだ。

って、いやいや、私は無実だし。

【ねぇ、桃香ちゃん。私どうしたらいいの?】

【どうしたらって?】

【いや、桃香ちゃんの彼氏くんだし…】

【あ、そういうことね。大丈夫。晴良ちゃんなら。犬山観光でもすれば?】

【いやいや、ふたりで行くの気が引けるし。犬山観光は桃香ちゃんとしたいし】

【大丈夫だよ。優くんは晴良ちゃんとのこと、勝手に報告してくるし】

【いやいや、それ、彼氏としてどうなの?】

【優くんらしいよね】

【いやいや、桃香ちゃん。もう少し優くんを教育した方がいいよぉ】

【彼氏教育?】

【そう】

【ま、変に隠された方が嫌だし】

【確かに】

【晴良ちゃんは、今、まだ自分の部屋?】

【うん。まだ布団の中】

【って、もうお昼だよね。いつまで寝てるの?】

【いやいや、最悪の目覚めすぎて】

【ははっ、ふたりきりが嫌なら、晴良ちゃんの友達とどっか行けば?】

【なるほど】

【あ、ヤバい。今から全体練習みたい】

【えっ、桃香ちゃん。部活の最中だったの?】

【うん。パート練だったから】

【ごめんね。変な時にLINEしちゃって】

【ううん。じゃあ、優くんのことよろしくね】

【嫌です。宅急便で送り返します】

【ははっ】

桃香ちゃんとは誤解されずに済んだが…

さてさて…
とりあえず、布団から出て…着替えよう。

パジャマを脱ぎ…
思わず、クローゼットの中の服を…

ちょっと可愛い服でも着ないといけないのか…

少し悩む。

すると、ドアがノックされる。

コンコンコンコン

なぜ4回。

「まだ寝てるの?」
優くんがドアを開けながら言う。

「も、もう、勝手には入るなって言ったやん」
私は慌てて、脱いだパジャマで身体を隠す。
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