遠距離恋愛は人をダメにする。
「お腹がすいたね」
「うん」
「あ、そうだ。ちょっと寄りたいお店があるんだ。寄っていい?」
「うん。いいけど、買食いって」
「夏休みだし、いいんじゃない?」
「夏休みだからって」
全く理由になっていない。
「でも、私、お金持ってきてないし」
「あ、それは大丈夫。私、お昼代ってお母さんからお金もらったから」
菜々のお母さんは、今日のお昼は仕事でいないらしい。
普段は夏休み中でも、朝に私用にお昼ごはんを準備してくれているが、今日は登校日だから「これで買って食べなさい」って、朝にお金をくれた。
久しぶりに友達と会って、その友達とお昼を一緒に食べようってなるかもしれないと考えたらしい。
なんて気の利く母親だろう。
「で、寄りたいお店って?」
「なんかショッピングモールの近くに揚げパン専門店が出来たらしいの」
「揚げパン専門店?」
なぜ、こんな暑い時に揚げパン?って思ったが
「気になっちゃって」
「菜々、そんなに揚げパン好きなの?」
「うん。大好き」
菜々は目を輝かせて言うもんだから
うわっ、マジなやつだ。
「ま、いいけど」
「じゃあ、行こっ」
ふたりはゆっくりそのお店に向かった。
日差しの強い、真夏のお昼過ぎ。
あちこちで蝉も鳴いている。
アスファルトの道路が容赦なく熱さを照り返す。
自然に汗が流れ出る。
私は少し後悔しながら、菜々の横を歩く。
日陰らしい日陰が無い道路を歩く。
お互いに自分のハンドタオルで汗を拭き、ハンドタオルをうちわ代わりにパタパタさせて。
でも、生暖かい風が流れるだけ。
「でね。次の日に彰くんに会った時に」
「は?」
急に話が再開された。
「ほら、踏み潰し事件の話の続き」
「いきなり?って、自分で踏み潰しって言ってるし」
「小4の頃に、それこそ、あそこのショッピングモールで友達とプリクラ撮りに行った時に、向こうも友達とゲーセンに来てて」
「ああ、ゲーセンとプリクラあるところ同じだもんね」
「うん。たまたま、私の友達がトイレ行ってて、私ひとりだった時に、彰くんが近寄って来て、いきなり“覚えてる?”って聞いてきて」
「で?」
「ちょっと怖かったから少し無視してたら」
「おれだよ。彰。ほら」
「“どこの彰だよ”って思ったけど、その子がこめかみの傷を見せて」
「保育園の時に、滑り台で」
って言うから思い出した。
「ああっ、あっくん?」
「えーと、菜々ちゃんだよね」
「うん」
もちろん、保育園の時と変わったといえば変わったけど、変わってないといえば変わってない。
これが第一印象だった。
「よくわかったね」
「もしかしたらって思ったから」
「北小だよね」
「そう」
「夏乃とか彩とか優里奈とか元気?」
私の方が東小エリアなのに北小エリアの北保育園に通っていたから、小学校が離ればなれになった子が多いのだ。
「今、太田さんとはクラス同じ。あそこに翔もいるよ」
彰の指差す先にコインゲームをしている子がいたが…
「?」
「覚えてない?尾関」
「覚えてないわぁ」
「ははっ、翔、可愛そう」
彰が笑う。
「今度の日曜日、また会わない?」
「えっ?」
ふと見ると、私と一緒に来ていた友達がトイレの方から戻ってきたのが見えた。
彰も私の視線を察知して
「じゃあ、来週の日曜ね。バイバイ」
と、無理やり約束をさせられてしまった。
「うん」
「あ、そうだ。ちょっと寄りたいお店があるんだ。寄っていい?」
「うん。いいけど、買食いって」
「夏休みだし、いいんじゃない?」
「夏休みだからって」
全く理由になっていない。
「でも、私、お金持ってきてないし」
「あ、それは大丈夫。私、お昼代ってお母さんからお金もらったから」
菜々のお母さんは、今日のお昼は仕事でいないらしい。
普段は夏休み中でも、朝に私用にお昼ごはんを準備してくれているが、今日は登校日だから「これで買って食べなさい」って、朝にお金をくれた。
久しぶりに友達と会って、その友達とお昼を一緒に食べようってなるかもしれないと考えたらしい。
なんて気の利く母親だろう。
「で、寄りたいお店って?」
「なんかショッピングモールの近くに揚げパン専門店が出来たらしいの」
「揚げパン専門店?」
なぜ、こんな暑い時に揚げパン?って思ったが
「気になっちゃって」
「菜々、そんなに揚げパン好きなの?」
「うん。大好き」
菜々は目を輝かせて言うもんだから
うわっ、マジなやつだ。
「ま、いいけど」
「じゃあ、行こっ」
ふたりはゆっくりそのお店に向かった。
日差しの強い、真夏のお昼過ぎ。
あちこちで蝉も鳴いている。
アスファルトの道路が容赦なく熱さを照り返す。
自然に汗が流れ出る。
私は少し後悔しながら、菜々の横を歩く。
日陰らしい日陰が無い道路を歩く。
お互いに自分のハンドタオルで汗を拭き、ハンドタオルをうちわ代わりにパタパタさせて。
でも、生暖かい風が流れるだけ。
「でね。次の日に彰くんに会った時に」
「は?」
急に話が再開された。
「ほら、踏み潰し事件の話の続き」
「いきなり?って、自分で踏み潰しって言ってるし」
「小4の頃に、それこそ、あそこのショッピングモールで友達とプリクラ撮りに行った時に、向こうも友達とゲーセンに来てて」
「ああ、ゲーセンとプリクラあるところ同じだもんね」
「うん。たまたま、私の友達がトイレ行ってて、私ひとりだった時に、彰くんが近寄って来て、いきなり“覚えてる?”って聞いてきて」
「で?」
「ちょっと怖かったから少し無視してたら」
「おれだよ。彰。ほら」
「“どこの彰だよ”って思ったけど、その子がこめかみの傷を見せて」
「保育園の時に、滑り台で」
って言うから思い出した。
「ああっ、あっくん?」
「えーと、菜々ちゃんだよね」
「うん」
もちろん、保育園の時と変わったといえば変わったけど、変わってないといえば変わってない。
これが第一印象だった。
「よくわかったね」
「もしかしたらって思ったから」
「北小だよね」
「そう」
「夏乃とか彩とか優里奈とか元気?」
私の方が東小エリアなのに北小エリアの北保育園に通っていたから、小学校が離ればなれになった子が多いのだ。
「今、太田さんとはクラス同じ。あそこに翔もいるよ」
彰の指差す先にコインゲームをしている子がいたが…
「?」
「覚えてない?尾関」
「覚えてないわぁ」
「ははっ、翔、可愛そう」
彰が笑う。
「今度の日曜日、また会わない?」
「えっ?」
ふと見ると、私と一緒に来ていた友達がトイレの方から戻ってきたのが見えた。
彰も私の視線を察知して
「じゃあ、来週の日曜ね。バイバイ」
と、無理やり約束をさせられてしまった。