遠距離恋愛は人をダメにする。
念願の揚げパンを食べられて満足した菜々。
木陰のベンチに座っていると、日向の眩しいほどのところには出たくない。
ふたりはペットボトルを片手に、話を続ける。
「で、次の日曜日に会ったんだ。彰くんに」
まずは私の方から菜々に尋ねる。
「だって、仕方ないじゃん。あんな強引に言われたら」
「ま、確かにそうだよね。いきなり待ってるからって。あのショッピングモールもフードコートかなんかで?」
「ううん。隣の町のファーストフードのお店に移動した。ほら、あそこのフードコート。誰に会うかわからないじゃん。私たちの東小の子もそして北小の子もたくさん来るから」
「ああ、なるほど。隣の町のって」
「ちょっと高いハンバーガー屋さんね」
「ま、あそこもきわどいけどね」
「でも、あそこなら小学生だけでは来ないでしょ」
「まぁね。で、何を話したの?」
「久しぶりだねって」
「は?」
私は思わず口にする。
「彰くんにとって、本当に懐かしくなったらしい。私をショッピングモールで見かけて」
「そりゃ、懐かしいけど」
「なんか彰くんにとって、私って特別なんだって」
「特別?」
「そう。小学生になる前の思い出って、すぐに私が出てくるんだって」
「うーん。なんだかなぁ。ちょっとキモい」
「まぁね。引くよね」
「って、なんでそこまで彰くんは菜々のことをそこまで思ってるの?だって、滑り台で踏み潰しただけじゃん」
私はチラリとこの公園の滑り台を見る。
「あの時、保育園の先生におんぶされて病院行って何針か縫ったって言ってたじゃん」
「うん。夜に謝りに行ったんだよね。親と」
「で、次の日には痛々しい包帯なんかしてて」
「うん」
「で、一週間後には包帯から大きな絆創膏になって、さらに一週間後ぐらいかなぁ。その絆創膏も取れたの」
「ちなみにその傷って、顔にどの辺に?」
「えーと、この辺りかなぁ」
菜々は、自分の右側の頬の下辺りを指差す。
「ああっ、確かに。彰くんって、その辺りに傷の痕あるわ」
「知ってるの?」
ちょっと菜々が顔色を変える。
「いやいや、あれって大きくはないけど、場所的にわかるでしょ」
「まぁね。確かに」
少し安心する菜々。
あれ?
何か私、変なこと言った?
今の菜々の様子って。
もしかして、マジマジと彰くんの顔を見ることがあった事に対しての嫉妬?
いやいや、言われてみれば、彰くんの右側の頬に傷痕があるのって、誰も突っ込まないけど、マジマジと見なくてもあるのはみんな知ってるだろうし。
「でね。なんでそんなに覚えてるの?ってファーストフードの店で彰くんに聞いたんだけど。私なんか張本人なのにそんなに覚えてないのに」
「ははっ」
私は苦笑い。
「やっぱりキモいじゃん。保育園の頃の話なのに、そんなに思われてるのって。それも特別って。ただ踏み潰しただけなのに」
「いやいや、大事故だし」
「なんかね。いや、これは彰くんから聞いたんだけど。いや、私は全然覚えてないんだけどね」
「うん?」
急に菜々の歯切れが悪くなる。
「キスしたらしいの」
顔を真っ赤にして菜々が言う。
「どこにぃ?」
思わず、私も訳わからない事を言う。
「傷痕に」
木陰のベンチに座っていると、日向の眩しいほどのところには出たくない。
ふたりはペットボトルを片手に、話を続ける。
「で、次の日曜日に会ったんだ。彰くんに」
まずは私の方から菜々に尋ねる。
「だって、仕方ないじゃん。あんな強引に言われたら」
「ま、確かにそうだよね。いきなり待ってるからって。あのショッピングモールもフードコートかなんかで?」
「ううん。隣の町のファーストフードのお店に移動した。ほら、あそこのフードコート。誰に会うかわからないじゃん。私たちの東小の子もそして北小の子もたくさん来るから」
「ああ、なるほど。隣の町のって」
「ちょっと高いハンバーガー屋さんね」
「ま、あそこもきわどいけどね」
「でも、あそこなら小学生だけでは来ないでしょ」
「まぁね。で、何を話したの?」
「久しぶりだねって」
「は?」
私は思わず口にする。
「彰くんにとって、本当に懐かしくなったらしい。私をショッピングモールで見かけて」
「そりゃ、懐かしいけど」
「なんか彰くんにとって、私って特別なんだって」
「特別?」
「そう。小学生になる前の思い出って、すぐに私が出てくるんだって」
「うーん。なんだかなぁ。ちょっとキモい」
「まぁね。引くよね」
「って、なんでそこまで彰くんは菜々のことをそこまで思ってるの?だって、滑り台で踏み潰しただけじゃん」
私はチラリとこの公園の滑り台を見る。
「あの時、保育園の先生におんぶされて病院行って何針か縫ったって言ってたじゃん」
「うん。夜に謝りに行ったんだよね。親と」
「で、次の日には痛々しい包帯なんかしてて」
「うん」
「で、一週間後には包帯から大きな絆創膏になって、さらに一週間後ぐらいかなぁ。その絆創膏も取れたの」
「ちなみにその傷って、顔にどの辺に?」
「えーと、この辺りかなぁ」
菜々は、自分の右側の頬の下辺りを指差す。
「ああっ、確かに。彰くんって、その辺りに傷の痕あるわ」
「知ってるの?」
ちょっと菜々が顔色を変える。
「いやいや、あれって大きくはないけど、場所的にわかるでしょ」
「まぁね。確かに」
少し安心する菜々。
あれ?
何か私、変なこと言った?
今の菜々の様子って。
もしかして、マジマジと彰くんの顔を見ることがあった事に対しての嫉妬?
いやいや、言われてみれば、彰くんの右側の頬に傷痕があるのって、誰も突っ込まないけど、マジマジと見なくてもあるのはみんな知ってるだろうし。
「でね。なんでそんなに覚えてるの?ってファーストフードの店で彰くんに聞いたんだけど。私なんか張本人なのにそんなに覚えてないのに」
「ははっ」
私は苦笑い。
「やっぱりキモいじゃん。保育園の頃の話なのに、そんなに思われてるのって。それも特別って。ただ踏み潰しただけなのに」
「いやいや、大事故だし」
「なんかね。いや、これは彰くんから聞いたんだけど。いや、私は全然覚えてないんだけどね」
「うん?」
急に菜々の歯切れが悪くなる。
「キスしたらしいの」
顔を真っ赤にして菜々が言う。
「どこにぃ?」
思わず、私も訳わからない事を言う。
「傷痕に」