遠距離恋愛は人をダメにする。
「えええっ」
思わず声を出して驚く私。
「いや、私は全く記憶に無いし。勝手に彰くんが言ってるだけかもしれないし」
菜々は早口で言う。
「本当に、本当?記憶に無いって」
「うん。全く無いし」
「でも、彰くんが言ってるだよね」
「うん」
どちらが正解なのか。
キスをした側の菜々は覚えていなくて、キスをされた側の彰くんは覚えている。
仮に、キスをした側の菜々が忘れたなら、記憶にも残らない程度の出来事。
いわゆる出来心的な、園児だった菜々が私のせいで出来た傷に対して何となく唇を当てただけ。
“痛いの痛いの飛んでいけ ”程度のキス。
絵本で見たお姫様を助けた王子様にキスをして、めでたしめでたしみたいな。
恋だの愛だのそんな感情のないキス。
だから、菜々には記憶に残っていない。
保育園のお遊戯会でやった役はなんとなく覚えていても、セリフを覚えていない。
それに対し、彰くんは、菜々にキスをされたことをしっかり覚えていた。
そんな感じなのだろうか。
また、逆に本当に菜々は彰くんにキスをしていなくて、でも彰くんが菜々にキスをされたと言ってたとするなら…
約4年ぶりにショッピングモールで会った保育園が同じで小学校が違う菜々に会った彰くんが、その1週間後に再会する約束をいわば強引にした。
その1週間の間に、忘れもしない保育園の時に菜々のせいで出来た傷痕に、菜々がこの傷痕にキスをしたことにして、菜々の気を引くために…
いやいや、後者の方はかなり無理があるし、彰くんってそんなに悪い奴だったかぁ
…
でも、菜々の誘い方が強引だったし、あり得るのか?
うん?
誘ったのが、強引?
仮に誘った後にキスされた話を作ったなら…誘い方は強引になる必要は無いよね。
ふふふ、強引に誘ってやった。さて、どうしてやろうかぁってならないよね。
また、4年間、考えに考え、この傷をつけた菜々にキスをされた話。
おっ、待ちに待った菜々に会えた。
強引に誘わなきゃともならない。
出来の悪すぎるミステリーだ。
要するに、やはり菜々は忘れて、彰くんは覚えていた。
それが正解なのかもしれない。
で、菜々が忘れているのはその程度の出来心的な理由。
あっ。
もしかして…
実は彰くんは保育園の頃から菜々のことが好きだった。たまたまその菜々が滑り台で遊んでいるのを見つけた。だから、一緒に遊ぼうとして滑り台の順番を待ってた菜々の後ろに並んだ。そして、菜々が滑り台の階段を登った。次は僕の番。登るために階段真下にいく。上から菜々が降ってきた。
うん。
うん。
きっと、それだ。
で、怪我はさせられたが、そんな好きだった菜々に出来心的なキスをされたもんだから、小学校が離ればなれになっても忘れられない菜々になった。そんな菜々をたまたまショッピングモールで見かけたもんだから、強引にでもふたりで会いたくなった。
どうだ。
私はなぜか難問でも解いた気になり、ひとりで興奮していた。
「で、付き合ったわけだ?」
勝手に私なりにストーリーを組み立て完結しちゃったもんだから、かなり飛躍した質問を菜々にしてしまう。
でも、当の菜々は
「うん。ちょっとしてからね」
と、少し照れながら答えた。
思わず声を出して驚く私。
「いや、私は全く記憶に無いし。勝手に彰くんが言ってるだけかもしれないし」
菜々は早口で言う。
「本当に、本当?記憶に無いって」
「うん。全く無いし」
「でも、彰くんが言ってるだよね」
「うん」
どちらが正解なのか。
キスをした側の菜々は覚えていなくて、キスをされた側の彰くんは覚えている。
仮に、キスをした側の菜々が忘れたなら、記憶にも残らない程度の出来事。
いわゆる出来心的な、園児だった菜々が私のせいで出来た傷に対して何となく唇を当てただけ。
“痛いの痛いの飛んでいけ ”程度のキス。
絵本で見たお姫様を助けた王子様にキスをして、めでたしめでたしみたいな。
恋だの愛だのそんな感情のないキス。
だから、菜々には記憶に残っていない。
保育園のお遊戯会でやった役はなんとなく覚えていても、セリフを覚えていない。
それに対し、彰くんは、菜々にキスをされたことをしっかり覚えていた。
そんな感じなのだろうか。
また、逆に本当に菜々は彰くんにキスをしていなくて、でも彰くんが菜々にキスをされたと言ってたとするなら…
約4年ぶりにショッピングモールで会った保育園が同じで小学校が違う菜々に会った彰くんが、その1週間後に再会する約束をいわば強引にした。
その1週間の間に、忘れもしない保育園の時に菜々のせいで出来た傷痕に、菜々がこの傷痕にキスをしたことにして、菜々の気を引くために…
いやいや、後者の方はかなり無理があるし、彰くんってそんなに悪い奴だったかぁ
…
でも、菜々の誘い方が強引だったし、あり得るのか?
うん?
誘ったのが、強引?
仮に誘った後にキスされた話を作ったなら…誘い方は強引になる必要は無いよね。
ふふふ、強引に誘ってやった。さて、どうしてやろうかぁってならないよね。
また、4年間、考えに考え、この傷をつけた菜々にキスをされた話。
おっ、待ちに待った菜々に会えた。
強引に誘わなきゃともならない。
出来の悪すぎるミステリーだ。
要するに、やはり菜々は忘れて、彰くんは覚えていた。
それが正解なのかもしれない。
で、菜々が忘れているのはその程度の出来心的な理由。
あっ。
もしかして…
実は彰くんは保育園の頃から菜々のことが好きだった。たまたまその菜々が滑り台で遊んでいるのを見つけた。だから、一緒に遊ぼうとして滑り台の順番を待ってた菜々の後ろに並んだ。そして、菜々が滑り台の階段を登った。次は僕の番。登るために階段真下にいく。上から菜々が降ってきた。
うん。
うん。
きっと、それだ。
で、怪我はさせられたが、そんな好きだった菜々に出来心的なキスをされたもんだから、小学校が離ればなれになっても忘れられない菜々になった。そんな菜々をたまたまショッピングモールで見かけたもんだから、強引にでもふたりで会いたくなった。
どうだ。
私はなぜか難問でも解いた気になり、ひとりで興奮していた。
「で、付き合ったわけだ?」
勝手に私なりにストーリーを組み立て完結しちゃったもんだから、かなり飛躍した質問を菜々にしてしまう。
でも、当の菜々は
「うん。ちょっとしてからね」
と、少し照れながら答えた。