あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
おデブに恋したイケメン君?
金奈高校。
ごく普通のどこにでもある普通の高校。
共学で毎日楽しそうな学生たちの声が響き渡っている。
「おっ、来たぞあのデブ」
「あいつ、転がった方が早いんじゃねぇ? 」
通学してきた男子生徒が小ばかにしているのは、大柄で太った女子高生。
着ている紺色のブレザーも下に着ている白いブラウスもパツンパツンで、ボタンがはちきれそうで、グレーに黒のチェック柄の膝丈スカートもはちきれそうで白いソックスもゾウさんの足のようになっていて、履いている黒いローハーも潰れているように見える。
「おーい神原(かんばら)! お前歩くより転がれ! 」
「その方が早いぞ! 」
男子生徒が冷やかしても、女生徒は知らんぷりしている。
この女生徒は神原(かんばら)ヒカル。
現在高校2年生。
デブで有名で、通り行く生徒達ばかりか先生までも「デブ」と言っている。
しかしヒカル本人は全く気にしていないのか、いつもニコニコしていて平気な顔をしている。
下校時刻で帰って行く生徒達が行き交う中を、冷やかされながらもヒカルはニコニコと歩いて帰っていた。
校門までヒカルがやってくると、校門の傍にはスラっとした長身でちょっとクールな感じのイケメンの男子生徒が立っていた。
紺色のブレザーにチェック柄のスラックスがとても似合っているこの男子生徒は、宗田聖龍(そうだ・せいりゅう)。
サッカー部に入っていてかなりモテている女子の間では有名なイケメンである。
そんな聖龍がヒカルを見つけると、ハッと目を見開いて嬉しそうな目をして歩み寄ろうとした。
が…
「神原さん! 待って! 」
歩いているヒカルを後ろから追いかけてきた男子生徒を目にした聖龍は、足を止めた。
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