あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…
誰も私の気持ちなんて分かってくれない…。
分かる筈がない! あんな思いしている人なんて、いやしないのだから…。
ふと、里菜の視界に向かい側の女子社員の姿が目に入った。
ツカツカと女子社員に歩み寄って行った里菜は、目を合わせないようにしている女子社員の顔を覗き込んだ。
「ねぇ貴女。もう男を知っているわよね? いくつで知った? 」
女子社員は長い髪で顔を隠して目を合わせないようにして、何も答えなかった。
「私はね、小学校6年生の時よ」
え? と驚いてチラッと里菜を見た女子社員はギュッと唇を噛んで俯いた。
「まだ生理だって始まったばかりで、不順だったの。何をされたのかも分からないまま、言われるままにさせられて。「どこも行く所がないだろう? 」って言われて。ご飯も満足に食べさせてもらえず、 毎晩のように性行為をさせられていたの。あんた、男を知っていても妊娠した事ある? 」
ギュッと唇を噛んだまま、女子社員は何も答えなかった。
「私はあるわよ、望んでいないのに勝手にできちゃってたわ。しかも、中学生の時よ! どうしようって、成すすべもなくこのまま産むしかないのかな? って思ったけど。助けてもらったのよ、駅前の歩道橋にね。あの場所から転落して、大怪我したけど流産してちょうど良かったわ。そのときね、助けてくれたのは副社長だったの。初めて優しくしてくれたのよ、助かった時に思ったわ。副社長は私の運命の人だって。あの忌々しい出来事を消してくれた、運命の人よ」
辺りを見渡すと、みんな黙ったまま何だか怯えているようだ。
「これで分かったでしょう? 副社長と私が運命で結ばれているってこと。そして、私は一番の被害者なの。何も悪くないのに、犯罪者の子供ってだけで酷い仕打ちばかりなの。おかしいのは、あんた達よ! 」
(それは違う…)
ん? 声がして里菜は辺りを見渡した。
すると。
また血まみれの太ったヒカルが現れた。