あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…

「またアンタ? 性懲りもなく、死にぞこないの格好で私の前に現れるなんて」

(あんたは親と同じ事をしている。殺人者の子供は、殺人を繰り返している)

「なんですって? 私が殺人を繰り返しているって、どうゆう事よ! 」
(あんたは私の事も殺した。そして、凛太朗さんと妹の香恋と香弥も殺した)

「何を言っているの? 勝手に転落したり交通事故で死んだだけじゃない。私が殺した証拠なんて、何もないわ」
(もうすぐ警察に提出されるよ。あんたが香恋さんの背中を押して、車の前に突き出した事も。凛太朗さんと香弥さんも、あんたが歩道橋から突き落とした事も全部ハッキリ写っているから)

「そんなものあるわけないでしょう? バカ言わないで! 」
(あるよ、アンタの記憶にはハッキリ残っているから。それに、この前自分で言っていたしね。もう逃げられないよ)

「何を言っているの? この死にぞこない! アンタが邪魔するからいけないんでしょ! 」
(邪魔なんてしていない。私は妹を護りたかっただけだから。アンタに突然殺されて、悔しかった。私と同じ思いをして死んでいった人達の怨念が、アンタをむしばんでいる事気づいている? )

「はぁ? 」

 目を座らせた里菜の視界に、ボワッと火の玉のように現れたのは、死んでいった人たちの姿だった。

 里菜が焼き殺した親戚一家。
 千堂家の党首と妻の千秋。
 そして凛太朗…香恋…香弥…。
 その他、血まみれの女性や首をロープで縛られた男性も次々と浮かんで来る。

 その光景に里菜は真っ青になった。

(あんたがどれだけ居直って、しらを切っても。記憶には残っているでしょう? だから、ちゃんと見えるんだよ。私の事も、今ままであんたが殺した人達が…)

「何を言っているの? 死んだ人間に、何ができるって言うの? 」

 強がる里菜に、浮かび上がって来た死んでいった人達がニヤッと笑いを浮かべて近づいて来た。

「な、なんなの? 」

 近づいてくる人達に、里菜は怯んだ。

 ニヤッと笑ったまま近づいてくる人達に、里菜は後退りをした。
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