あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…

「なに? しょせん亡霊でしょう? 死にぞこないじゃない! 」

 近くのデスクの上にあった書類を手に取り、里菜は近づいてくる死んでいった人達に投げつけた。

 その書類は他の社員へ飛んで行った。

「わぁ! 」

 驚いて避けた社員の姿は、里菜の視界には写っていないようだ。

「来ないでよ! 死にぞこない! なんなのよ! 」

 叫びながら、里菜は手あたり次第のモノを手に取り投げ続けた。

「痛い!」

 里菜が投げつけたファイルが男性社員の顔面に直撃したようで、痛みで蹲っているが、里菜には全く見えていないようだ。


 
 騒ぎの報告を受け、奏弥と聖龍も駆けつけてきた。

「あ、社長! 」

 一が奏弥に駆け寄って来た。

「社長、千堂さんが暴れ出してしまって。 独り言なのか、幻覚が見えているのか分かりませんが。一方的に叫んでいるのです」
「分かりました。今、警察に通報したので。もうすぐ来てくれると思います」


 手あたり次第ものを投げつけながら、里菜は狂ったように叫び続けている。

 死んでいった人達は大笑いを浮かべはじめ、里菜を出口の方へ誘った。

 ムキになっている里菜は、そうとは気づかずに死んでいった人達を追いかけながら物を投げつけ続け出口の方へ向かって行った。


 廊下に出ても狂ったように叫び続け、里菜は手あたり次第にものを手に取り投げ続けている。
 そのせいで、窓ガラスに傷がついたり壁がへこんだりしている。


「全くしつこい奴等ね! 」

 里菜はエレベーター前に来て、そのまま乗り込んだ。


「なんなの? 死んだ人間が出てくるなんて…。私は被害者よ! 」


 
 エレベーターが1階エントラスへ到着した。

 怒りを露に降りて来た里菜は、ツカツカと歩いて受付にやって来た。


「ちょっとあんた達! 」

 里菜は若い受付嬢に怒鳴りつけた。
 突然怒鳴られた受付嬢は驚いて、キョンとなっていた。

「受け付けにいながら何をしているの! へんな亡霊なんか勝手に出入りさせて! 」

 何のことを言われているのか、受け付け嬢にはさっぱり分からない。
 だが里菜の怒りはどんどん増していった。
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